AI Pulseの裏側:AIエージェント7体でメディアを自律運営してみた
AIエージェント7体が毎日自動でニュースを収集し記事を書くメディア「AI Pulse」。その仕組み、成功事例と失敗事例のリサーチ、安全設計、そして正直な課題をすべて公開します。
AI Pulseは、7体のAIエージェントが毎日自動でニュースを集め、記事を書き、公開するメディアです。この記事では、なぜこのプロジェクトを始めたのか、どんな仕組みで動いているのか、そして正直にぶつかっている課題まで、すべてお話しします。
きっかけ — AIエージェントで会社を回す事例が増えていた
2026年に入り「AIエージェントだけで事業を運営する」事例が急増しました。これ本当にできるのか?と思い、まずリサーチから始めました。調べてわかったのは、成功も失敗も両方リアルに起きているということでした。
リサーチで見つけた光と影
成功している事例
The Rundown AI はAIニュースレターで200万人以上の購読者を獲得しています。少人数チームとAIの組み合わせで、毎日コンテンツを配信し続けるモデルです(出典)。
Mindstream はAI活用のメディアスタートアップとして成長し、マーケティング大手HubSpotに買収されました(出典)。AIメディアにも出口戦略があることを示した事例です。
起業家の Jacob Bank は40体のAIエージェントでマーケティング業務を自動化し、100万ドル規模のビジネスを少人数で運営しています(出典)。
失敗している事例
一方で深刻な事故も起きています。あるマルチエージェントシステムでは、2つのAIが互いにリクエストを送り合う無限ループに陥り、4万7000ドル(約700万円)のクラウド請求が発生しました。11日間誰も気づかなかったそうです(出典)。
カーネギーメロン大学(CMU)の研究「TheAgentCompany」では、最も高性能なAIでもオフィス業務のタスク完了率はわずか 24% でした。4つ頼んで1つしか終わらない計算です(出典)。
Sports Illustrated では、AIが生成した記事を架空の著者名で公開していたことが発覚し、CEOが解任される事態に発展しました(出典)。透明性を欠いたAI活用のリスクを示す教訓です。
こうした成功と失敗の両方を踏まえて「じゃあ自分で安全に設計してやってみよう」と思ったのがAI Pulseの出発点です。
7体のエージェント構成
AI Pulseは以下の7体のエージェントで構成されています。それぞれ明確な役割を持ち、決まったスケジュールで動きます。
| エージェント | 役割 | いつ動くか |
|---|---|---|
| Research | AI/テクノロジーのニュース収集 | 毎日 0:00 |
| Content | リサーチ結果をもとに記事を執筆 | 毎日 1:00 |
| SEO/Editor | 記事の校正・ファクトチェック・SEO最適化 | Content完了後 |
| Social | X(旧Twitter)投稿用のテキスト生成 | SEO/Editor完了後 |
| Analytics | KPI(アクセス数や購読者数など)の収集と週次レポート | 毎週土曜 |
| Eval/Improve | 記事品質の評価と自己改善 | 毎週日曜 |
| CEO | 全体戦略のレビューと各エージェントへの指示 | 毎週日曜 |
ポイントは Eval/Improve Agent の存在です。これはAndrej Karpathy(テスラの元AI責任者)が提唱した自己改善パターンを応用しています。毎週、過去の記事を採点し、高スコア記事と低スコア記事の特徴を比較分析して、記事の書き方ルール(style-guide)を自動更新します。ただし改善版で実際にテスト記事を生成し、スコアが上がった場合のみ変更を適用するという安全弁をつけています。
技術スタック — 全部無料で始めた
| 用途 | 使っているもの | 費用 |
|---|---|---|
| ブログ本体 | Astro(静的サイトジェネレーター) | 無料 |
| ホスティング | GitHub Pages | 無料 |
| エージェント基盤 | Claude Code Scheduled Tasks | 既存サブスク内 |
| バージョン管理 | Git + GitHub | 無料 |
Astro は静的サイトジェネレーター(HTMLファイルを事前に生成するツール)で、表示速度が速くSEOにも有利です。GitHub Pages は静的サイトを無料でホスティングできるサービスです。つまり、ドメイン代(年間約1800円)以外は追加費用ゼロで運営できます。
ファイルシステムベースのエージェント間通信
7体のエージェントがバラバラに動いたら混乱します。そこでAI Pulseでは「ファイルシステムベースの通信」という仕組みを採用しました。
agents/
├── research/daily/2026-03-25.md ← Researchが書く
├── content/drafts/2026-03-25-*.md ← Contentが書く
├── seo-editor/reviewed/*.md ← SEO/Editorが書く
└── ...
ルールは単純です。
- 各エージェントは 自分のフォルダにだけ書き込める
- 他のエージェントのフォルダは 読み取り専用
- CEO Agentからの指示は
shared/communication/に置く
たとえばContent Agentは、Research Agentが書いた research/daily/2026-03-25.md を読んで記事を書きます。でもResearch Agentのフォルダに直接書き込むことはできません。この制約のおかげで、エージェント同士が互いのファイルを上書きする事故を防げています。
データベースやメッセージキューのような複雑なインフラは不要。ファイルとフォルダだけで通信が成立するので、トラブルシューティングも簡単です。
安全設計 — 4万7000ドル事件を繰り返さないために
リサーチで見つけた4万7000ドルのループ暴走事件。これを絶対に繰り返さないため、AI Pulseでは以下の安全設計を入れています。
1. ループ回数の制限 すべてのエージェントに最大実行時間を設けています。Research Agentは15分、Content Agentは30分。時間を超えたら強制停止します。
2. 権限の最小化 エージェントにはそのタスクに最低限必要な権限だけを与えています。外部APIへの書き込みは禁止。ファイル削除も禁止。できるのは新規作成と上書きだけです。
3. 人間による承認ゲート 記事の公開やSNSへの投稿は、エージェントが下書きを生成するところまで。実際の公開は人間(私)が確認してから行います。
4. 段階的な自律化 最初から全自動にはしません。まず人間が毎回チェックして、安定してきたら徐々にチェック頻度を減らす方針です。
5. 全記事にAI生成を明記 Sports Illustrated の教訓を活かし、すべての記事のフッターにAI生成であることを明記しています。
初日の実績 — 2日で10本の記事を公開
プロジェクト開始から2日間で、10本の記事を生成・公開しました。テーマは「AIコーディングツール比較」「ChatGPT vs Claude vs Gemini」「プロンプトエンジニアリング入門」など、AI初心者から中級者に役立つ内容です。
記事の生成自体は速いです。Research Agentがニュースを集め、Content Agentが記事を書き、SEO/Editor Agentが校正する。このパイプラインが1記事あたり約1時間で回ります。人間が一人で書いたら半日はかかる作業です。
正直な課題 — まだ解決できていないこと
うまくいっているように見えますが、正直に書きます。課題は山積みです。
git pushの権限問題 エージェントが記事を書いても、GitHubへのpush(公開作業)には人間の操作が必要です。完全自動での公開フローはまだ実現できていません。
品質のばらつき 10本の記事のうち、そのまま公開できるレベルのものと、大幅な手直しが必要なものが混在しています。Eval Agentの自己改善ループが回り始めれば改善するはずですが、まだ十分なデータがありません。
読者ゼロ 2日で10本書きましたが、読者はまだほぼゼロです。記事を書くことと読んでもらうことはまったく別の問題だと痛感しています。SEOの効果が出るには通常3〜6ヶ月かかるため、気長に取り組む必要があります。
事実確認の限界 Research Agentがウェブから情報を集めますが、その情報が正確かどうかの最終判断は現状、人間に依存しています。AIだけで完璧なファクトチェックはまだ難しいです。
今後の計画
短期(1ヶ月以内)
- Eval Agentの自己改善ループを本格稼働させる
- X(旧Twitter)での発信を開始し、読者を獲得する
- 月30本の記事ペースを安定させる
中期(3ヶ月)
- 購読者500人を目指す
- 広告収益の仕組みを導入する
- このエージェント運営の仕組み自体を「AI開発受託」のポートフォリオにする
長期(6ヶ月〜)
- 購読者2000人・月間5万PV
- 企業向けにAIエージェント構築を受託する事業を本格化
- AI Pulse自体を「AIエージェントで事業を回せる」実績として営業に活用する
まとめ — AIエージェント運営は「できる」が「簡単ではない」
AI Pulseを始めてわかったこと。AIエージェントによるメディア運営は技術的には可能です。無料の技術スタックで、7体のエージェントが毎日自動で記事を生成する仕組みは2日で構築できました。
ただし「できる」と「うまくいく」は別です。品質管理、読者獲得、安全設計、そして何より人間による監督。これらを地道に積み重ねていく必要があります。
このメタ記事自体がAI Pulseの実験そのものです。今後も進捗を正直に公開していきます。うまくいったことも、失敗したことも。
この記事はAI(Claude)の支援を受けて作成されました。AI Pulseの全記事はAIエージェントが生成しています。事実関係は出典元をご確認ください。